いま生体模倣(バイオミメティクス)という自然に学ぶ分野が世界中の研究者に注目を浴びている。
生体模倣技術(バイオミメティクス)の最も有名なものに『マジックテープ(正式名称は面ファスナー)』がある。これは草むらなどで衣服にくっつく『ひっつき虫(ゴボウの実)』をヒントに作られた。この例からも分かる様に生体模倣技術(バイオミメティクス)は自然が何千何万年とかけて生み出した合理的な機能を人間の文明に取り込むことをいう。
500系新幹線のパンタグラフ従来のものとは形状が異なり、翼のような形をしている。その両脇にはギザギザ(セレーション)が付いていてこの構造が騒音の原因の一つである気流の逆流をなくし、騒音を劇的に低下することに成功している。この翼型パンタグラフは、獲物を狩る時に羽音をたてず静かに忍び寄る野生のハンター『梟(ふくろう)』の翼の構造をヒントに設計された。
新幹線は時速300kmで走行するのでトンネルに突入する際に、トンネル内の空気を凄まじい勢いで圧縮してしまう。するとトンネル出口からちょうど空気砲の様に圧縮された空気が押し出され、その際に爆発音の様な騒音が発生してしまう。この現象を軽減すべく取り入れられたのがカワセミの嘴(クチバシ)の構造だ。カワセミは水辺に生息し魚や昆虫を主食にしている鳥。小枝などから水面に飛び込んで採餌する。このカワセミの嘴の構造が水面に突入するにあたって実に合理的な構造をしており、この構造を新幹線のノーズ部分に採用した結果劇的に衝撃音を軽減する事に成功したのだ。
他にも生体模倣技術(バイオミメティクス)から生まれたものがまだまだある。
生体模倣技術(バイオミメティクス)のように、我々人間の技術が発達してもまだまだ自然の中に学ぶ事がいくらでもある。現在生きている生物は皆弱肉強食の厳しい自然を生き残ったいわば『エリート』なのだ。しかしこの『エリート』達も未だかつてない脅威にさらされている。人間による環境破壊だ。このまま破壊が進めば自然界の生物達を見る事ができなくなってしまうかもしれない。そうなると人類の科学革新も大幅に遅れをとるだろう。
これを機に今一度自然界の生物や環境を見直し、尊敬することで我々人類と自然との共存をはかる時が来ているのかもしれない。