生体模倣 バイオミメティクスの最たる例
生体模倣技術(バイオミメティクス)の最も有名なものに『マジックテープ(正式名称は面ファスナー)』がある。これは草むらなどで衣服にくっつく『ひっつき虫(ゴボウの実)』をヒントに作られた。この例からも分かる様に生体模倣技術(バイオミメティクス)は自然が何千何万年とかけて生み出した合理的な機能を人間の文明に取り込むことをいう。
梟(フクロウ)の羽の構造を真似て騒音問題を解決!
500系新幹線のパンタグラフ従来のものとは形状が異なり、翼のような形をしている。その両脇にはギザギザ(セレーション)が付いていてこの構造が騒音の原因の一つである気流の逆流をなくし、騒音を劇的に低下することに成功している。この翼型パンタグラフは、獲物を狩る時に羽音をたてず静かに忍び寄る野生のハンター『梟(ふくろう)』の翼の構造をヒントに設計された。
カワセミの嘴(クチバシ)でトンネル衝突音を軽減!
新幹線は時速300kmで走行するのでトンネルに突入する際に、トンネル内の空気を凄まじい勢いで圧縮してしまう。するとトンネル出口からちょうど空気砲の様に圧縮された空気が押し出され、その際に爆発音の様な騒音が発生してしまう。この現象を軽減すべく取り入れられたのがカワセミの嘴(クチバシ)の構造だ。カワセミは水辺に生息し魚や昆虫を主食にしている鳥。小枝などから水面に飛び込んで採餌する。このカワセミの嘴の構造が水面に突入するにあたって実に合理的な構造をしており、この構造を新幹線のノーズ部分に採用した結果劇的に衝撃音を軽減する事に成功したのだ。
まだまだある生体模倣技術(バイオミメティクス)
他にも生体模倣技術(バイオミメティクス)から生まれたものがまだまだある。
サメのウロコで競泳水着
サメの無数の鋭い歯のようなウロコは乱流を弱める。これは競泳水着に採用されている。一時期話題となったSpeedo社の製品が有名。
カタツムリの殻で防汚構造
カタツムリの殻は汚れや油汚れに強く、水で流しただけでも汚れが落ちてしまう。この構造をヒントに汚れが付きにくく落とし易いキッチンや外壁が誕生した。
ハスの葉から超撥水構造
ハスの葉の表面は超微細の突起がありこの構造が超撥水効果を生み出している。水をはじく際に付着した異物を同時に流し落とす自浄効果(ロータス効果)がある。これを応用し、塗料や建材、布などに同様の構造をもたせる事で汚れない素材が開発されている。
蚊の口から極細注射針
極細の蚊の口吻をヒントに痛みを感じさせない注射針が開発された。
蛾(ガ)の目の構造から反射防止フィルム
蛾の目は、夜間に目に入った光が反射して外敵に自分の存在を知られないよう光を反射しない微細構造(無反射構造)をもっている。この構造を模倣したフィルムを液晶画面に貼付けることで、強い光源下や太陽光下でも見やすい画面を実現している。
砂漠に暮らすサンドフィッシュ(トカゲ)から低摩擦材料
砂漠を泳ぐように進むことのできるトカゲの皮膚を模倣して、耐摩耗性の表面コーティング技術が研究されている。
コオロギやナガヒラタタマムシの触角から高精度センサー
山火事の跡地に産卵するナガヒラタタマムシから赤外線センサー、気流の変化を察知して外敵から身を守るコオロギから効率の良いMEMS センサーが研究されている。
『自然に学ぶ』そして共存
生体模倣技術(バイオミメティクス)のように、我々人間の技術が発達してもまだまだ自然の中に学ぶ事がいくらでもある。現在生きている生物は皆弱肉強食の厳しい自然を生き残ったいわば『エリート』なのだ。しかしこの『エリート』達も未だかつてない脅威にさらされている。人間による環境破壊だ。このまま破壊が進めば自然界の生物達を見る事ができなくなってしまうかもしれない。そうなると人類の科学革新も大幅に遅れをとるだろう。 これを機に今一度自然界の生物や環境を見直し、尊敬することで我々人類と自然との共存をはかる時が来ているのかもしれない。